法政大学で行われた、
【日本経営診断学会「第56回 全国大会」】
に参加してきました。
(大会プログラムはhttp://www.shindangakkai.jp/zenkokutaikai/program_56th.pdfからご覧いただけます。)
私は「弁護士の健康経営支援 ~裁判例分析と企業経営への適用~ 」
というテーマでお話させていただきました。
健康経営に関連する約70の労働判例から、
①健康診断の実施・実施後の措置
②過重労働
③メンタルヘルス不調
④休職・復職
の各場面における企業、取締役、上司の対応を抽出しました。
また、研修では裁判例を取り上げることが多いですが、
「裁判例はハードルが高く、これまで触れてこなかった」
とのお声を耳にします。
そこで、ただお伝えするだけでは複数の裁判例を実務で使えるように整理することは困難だと考え、当日はフローチャートにしてお示ししました。
また、日本経営診断学会は名前が示すとおり、
「経営」
に関する学会ですので、法律と経営を掛け合わせたお話もさせていただきました。
生産性の向上
例えば裁判例は、労働時間の削減方法として人手不足の解消や受注の制限等を挙げていますが、
労働人口の減少や取引先の喪失リスクといった点からこの要求に従うことは多くの企業にとって困難でしょう。
他方、売上や利益を維持しつつ労働時間を削減するためには、生産性の向上や無駄な業務の廃止、コア業務の分析等が必要になってきます。
すなわち、裁判例が要求する事項を実現するためには経営に関する施策が必要になってきます。
当日は、生産性の向上方法について少し触れさせていただきました。
組織とメンタルヘルス
また、メンタルヘルスとの関連で、組織論についてもお話しました。
判例は、
「労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、メンタルヘルスに関する情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要」があると述べています(東芝(うつ病・解雇)事件―最2小判平26年3月24日労判1094号22頁)。
しかし、
メンタルヘルス不調の病識がないこと、
病識があっても他者に言えないこと、は多いです。
そこで、
- 同僚や部下などの体調不良に気づけること
- 体調不良に気づいた場合に言える関係・組織の構築
すなわち、周囲によるサポートが必要になります。
「前田道路事件(高松高判平21年4月23日労判 990号134頁)」
を題材に、どのようにして上記のような組織にすべきかについてもお話させていただきました。
また、メンタルヘルス対策と生産性向上の関係についても取り上げました。