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カード型空気清浄器を販売する会社に対する課徴金納付命令

近年、カード型の空気清浄器をよく見かけるようになりました。

首からぶら下げたり、パスケースに入れて持ち歩いている人もいらっしゃるかと思います。

Salute.Lab株式会社が販売する「イオニアカードPLUS」もそのうちの1つです。

 

ところが、令和3年6月25日、Salute.Lab株式会社が販売する「イオニアカードPLUS」に係る表示について、景品表示法8条1項に基づき、同社に1559万円の課徴金納付命令が下されました。

 

Salute.Lab株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について | 消費者庁

 

消費者庁によると、同社は、本件商品を身に着けた者にウイルス、菌等を寄せ付けない効果が得られるかのような表示をしていたとのことです。

 

 1 表示内容

 では、同社は「イオニアカードPLUS」に関してどのような表示をしていたのでしょうか。一例になりますが、画像と共にご紹介します。

 

・商品の画像と共に、「検証結果で分かるイオニアカードの確かな効果」、「スギ花粉84.5%除去」及び円グラフの画像、「ヒノキ花粉77.6%除去」及び円グラフの画像、「PM2.5 90.1%除去」及び円グラフの画像 

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・「カードを身につけるだけで空気のトラブルからあなたを守る」、「花粉」、「アレル物質」、「ウイルス」、「PM2.5」、「タバコのニオイ」及び「これらは、ぜんそくや鼻水・鼻詰まり、目のかゆみなどの原因に。インフルエンザには、二次感染のリスクもあります。『イオニアカード』は、そんな”空気のトラブル”からイオンの力であなたを守ります。」 

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消費者庁は、このような表示をすることにより、

あたかも、本件商品を身に着ければ、本件商品から発生するイオンの作用により、本件商品から半径1.5メートルから2メートル程度又は半径1.5メートル程度の身の回りの空間における花粉及びPM2.5を除去し、本件商品を身に着けた者にウイルス、菌等を寄せ付けない効果が得られるかのように示す表示をしていた。

と判断しています。

 

2 合理的な根拠がないこと

消費者庁は、景品表示法8条3項に基づき、同社に対し、この表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。

しかし、同社から提出された資料は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものではなかった、と判断されています。

 

3 打消し表示

さらに、同社は、「検証結果で分かるイオニアカードの確かな効果」と記載のある自社ウェブページにおいて、

「●本製品は空気の清浄効果を保証するものではありません。」などと表示していました(打消し表示を狙ったものと思われます)。

 

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しかし、消費者庁はこの表示について、

一般消費者が……表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではない。

と判断しています。

 

なお、打消し表示に関しては、こちらの記事に記載していますので、お時間のあるときにご覧下さい。

maruyama-lawyer.hatenablog.com

 

 4 措置命令

なお、Salute.Lab株式会社に対しては、令和2年12月22日付で、「イオニアカードPLUS」の表示について、

景品表示法5条1号に違反する行為(優良誤認)が認められたとして、同法7条1項に基づき、措置命令が行われていました。

 

Salute.Lab株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について | 消費者庁

 

 

5 まとめ

イオニアカードPLUS」は1個あたり3960円(税込)で販売されているようですので(令和3年6月28日現在)、課徴金として納付することが命じられた金額は本件商品約4000個分に相当する金額になります。

金銭のダメージのみならず、企業の信用性・ブランド力を失わないためにも、訴求力の高い広告を掲載することのみに注力するのではなく、景品表示法をはじめとする各種法令に違反しないよう、専門家に相談しつつ適切な広告を掲載することが重要です。